自分がやりたいことに夢中になれる人生を後押しする

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【インタビュー連載】十文字高校 × DeruQui ×OPT共催 「J-Lab.×DeruQuiコラボゼミ

学校法人十文字学園 十文字高校 自己発信コース(以下、十文字高校)と一般社団法人DeruQui(以下、DeruQui)、そしてOPTの3者が協働して2022年度に開催された全6回のオンラインプログラム「J-Lab. × DeruQuiコラボゼミ」

⬆︎2022年 J-Lab.×DeruQuiコラボゼミ 全6回テーマ

⬆︎2022年 J-Lab.×DeruQuiコラボゼミ 実施方法

プログラムを通してどのような気づきがあったのか。全4回に渡って、十文字高校の先生や生徒、親子、DeruQuiの皆さんへのインタビューをお届けします。

第4回目となる今回は、生徒インタビューにも参加いただいたIさんとお母さんのMさんへの親子インタビューです。DeruQuiや自己発信コースでの活動を通して娘さん(Iさん)にどのような変化が生まれていると感じているのか、進学のきっかけや普段の会話なども踏まえてお話を伺いました。

自分がやりたいことに夢中になれる人生を後押しする

内山)まず初めにIさんから自己発信コースに行きたいと話があった時に、背中を押そうと思ったきっかけや理由を教えてください。

(Mさん)遠回りでも、自分がやりたいことに対して夢中になれる人生の方がいいと思っていましたし、本人のやりたいことが決まっていて自己発信コースにとても興味を持っていたので、まず話を聞いてみようと思いました。私はできたばかりのコースで前例がないことに少し不安があったのですが、本人が行きたいところに行かせるのが一番いいと思っていて。自分で決めないと、ずっと自分の人生を人のせいにしていくことになってしまう。やっぱり自分で選択して、仮に失敗したとしてもその失敗を咀嚼して解決していかなくちゃいけないと思うんです。自分で決めたんだから、面白くなかったり違うところがあっても親のせいにしないで、自分でちゃんと考えて解決するようにしてね。ということは伝えていました。それでIも気に入って、一人で部活見学に行ったりとか入学する前に何回か十文字に行っていましたね。

(内山)そうなんですね。

(Mさん)もともと子供たちがやりたいと言ったことは時間とお金が許す限りやらせてみて、その代わり辞める時も自分で話して辞めるように伝えていました。そのように自分でやりたいと思ったことは最後まで自分で責任を持つことが、自立心が出てきた理由の一つだと思っています。
でも普段は高校生らしい話ばかりしていますよ(笑)この前は、学校のアイスの種類に思うことがあったみたいで、いろいろ言っていたのですが、「だったら、思うことを先生たちに伝えたらいいんじゃない。自分が何も言わないと、相手はこれで満足してるんだと思うし、自分が言わないと何も変わらないよね。」と話したり。普段はそのような話や会話をしています。

(Iさん)親子での会話は多いですね。一緒に出かけて、ずっと親子で喋っています。

(Mさん)一緒にカフェに行った時に気がついたことや、なんでこうなっているんだろう?といったことを話すことが多いです。例えばカフェも、同じお店でも店舗によって置いているものやサービスが違うことがありますが、それって何か理由があるからだと思うんです。その理由を一緒に考えてみたり、目についたことから、こうだったら過ごしやすいのにね、といったことをよく一緒に話します。

(Iさん)そういう一つの話題から最終的に政治の話とかニュースの話とかになったりして、それが普通の日常会話ですね。

自己発信コースに進学して生まれた変化

(下山田)以前の生徒の皆さん3人でのインタビュー時に「DeruQuiを通して変わったことはありますか?」という質問に対して、Iさんが家族の中での役割を考えるようになったとお話しされていました。去年1年間を振り返り、Mさんから見て、Iさんが家族との関係性の中で変化したと感じることはありますか?

(Mさん)私が仕事に行っている時に家でやっていてほしいことを手伝ってくれていたり、家族での会話が途絶えていないのは、DeruQuiのプログラムや自己発信コースで、「人に伝える」ことを繰り返した結果なのかもしれないとリンクしています。以前よりも会話で共通の話題を出すようになったと感じていたのですが、意識的に話題をふっていたのですね。

そして、自分の中で解釈して人に伝えることが上手になったことが一番大きい変化かもしれません。自分の気持ちを、起承転結の「結」に持ってくるような話し方になったと思います。中学生のときは、自分の視点中心で感情を前面に出す話し方でしたが、今は客観的に状況を見ながら、自分の思っていることを伝えられるようになったと思いますし、もともとの娘の良さでもある、「こう思ったからこうした」と自分の考えをしっかりと持っているところが良い意味でより強くなったと思います。

(下山田)客観的に見るようになったことや、伝え方の変化は、何を通して身についたと思いますか?

(Iさん)十文字高校の授業で身についたと思います。何かを複数人で一緒に決めるときにそれぞれの価値観を同じ水準にするために、ある程度決まっている縦軸横軸を提示する「目線合わせ」や、論理コミュニケーションの授業を通して、先に論理的に状況説明をしてから自分の考えを話す手法や、書く力が身についたと思いますね。

(下山田)面白い。自己発信コースでの様々な経験が組み合わさって、今のIさんが出来上がっているんですね。

(Mさん)この子の性格にこのコースがとても合っていたんだと思います。先日保護者でのランチ会があったのですが、多くの保護者がコミュニケーションが増えたとお話しされていました。内向的だった方が自分の気持ちを話すようになったり、自分の進みたい道を伝えるようになったり、その日あった出来事を話すようになったり、普段のコミュニケーションが増えたと皆さんお話ししていました。自分たちの子供が変わったと答える保護者はたくさんいるのですが、座学中心の授業が多い学校だったら変わらなかったんじゃないかと思います。

(Iさん)クラスで親と話す人が増えたのは、DeruQuiで見知らぬ大人と話す機会があったからだと思います。DeruQuiに参加している大人の方って、相手の年齢関係なく同じ目線で話してくれるので、大人って信頼できるんだなと思うようになったし、話すことが怖くなくなったり、楽しいと感じるようになりました。その経験があって、親や先生にも相談できるようになったと思います。DeruQuiの経験がなかったら話さなかったんじゃないかと思いますね。

(下山田)なるほど。そんな影響が出ていたんですね。

(Iさん)見知らぬ大人に対して話すことが出来るなら、自分の親にも話せるんじゃないかなって。それに自己発信コースにいると、いろんな人の意見が知りたくなるので、親に話してみたらどう思うんだろうと、ちょっとした冒険心で話してみることも増えました。すると意外と自分の思いもよらない返答や、自分だけでは考えつかなかった意見が出てきたんです。例えば、私の母は、専業主婦を二十年ほど経験していて、その前には社会経験があって、サービス業を経験していて、今働いていて…など、自分にはない経験を持つ人からの意見って、自分や生徒間では出てこないから、他のことも聞いてみようと思って話すようになりました。

(下山田)面白いですね。親は「親」としかみたことがなかったな。

(内山)Iさんはたくさんの見方を持っているよね。

(Iさん)「親」という属性だけではなくて、大人であり人であり…といろんなところが見えてくるようになりました。DeruQuiの最終回で、何年後にどうなりたいかを発表しましたが、自己発信コースは基本的に自分像がないと進まないクラスだと思うんです。だから必然的に自分の将来を考えるのですが、考えるときに一番身近にいる大人って親ですよね。だから、親のことも、元々こういうことしてて…といった背景を考えるようになった時に、「親」というよりも「いろんなバックグラウンドを持った大人の人」という捉え方や接し方になったと思います。

(下山田)そう思えたら、コミュニケーションが楽しくなりそうですね。

自己理解が行動を後押しし、人生がどんどんアップデートされてゆく

(下山田)Iさんは入学時から将来像を持っていて、十文字での生活を通して人生がどんどんアップデートされていくような1年半を過ごしていると思うのですが、入学時と今を比べて将来像がアップデートされている感覚はありますか?

(Iさん)軸はあまり変わっていませんが、ビジネスプランの授業やDeruQuiで大人の方々のお仕事の話を聞いたことで、逆算して考えるようになり、視野も広がって、大学選びや資格の話など、かなり具体的に考えるようになりました。

(下山田)なるほど。なぜ具体性が上がったと思いますか?

(Iさん)自分が作った資料を見返しながら、そこからどんどんアップデートして変わっていったと思います。入学したばかりの頃に1人5分間の自己紹介プレゼンを行ったのですが、その時の資料を自分の探究を進めるときに一回振り返ってみたんです。すると入学当初に書いていたことと、自分の今の考えが違うことに気がついて、何で変わったんだろうと考えるようになりました。例えば「入学当初は韓国語の先生になりたいと思っていたけど、今は翻訳の仕事がしたい。そしたら翻訳が学べる学校に行こう」といった風に、どんどん思考が変わっていくし、やりたいことも変わっていっています。

(下山田)DeruQuiのゼミも含め、自己発信コースにいると、自己理解の時間がとても長いと思うのですが、前の資料から次の資料にアップデートするときに、自己理解することがどのくらい活きていると思いますか。

(Iさん)全てに関わっていると思います。例えば、自分は挑戦することがあまり得意ではないと思っていても、本心では挑戦したい気持ちがあると分かった時、挑戦してみようと思ったり、海外の大学に行きたいと言ったら親は反対するだろうと思っていたところを、一回海外の大学に行く挑戦をしてみようと思ったり、自己理解を通して行動や路線を少し変えてみて、新しい資料を作っていくということがほとんどなので、全てに関わっていると思います。

(内山)自己理解が行動の後押しをしているんですね。

(下山田)それは着実にアップデートされていきますね。自分の可能性を信じている姿がめちゃくちゃ素敵です。お母さんからみて、将来像やキャリアの話など入学時と比べて進展があったと感じますか?

(Mさん)やっぱり徐々に具体的になっていると感じています。最初はざっくりとした「韓国」という興味から、色で例えると白になったり青になったり水色になったり…色がどんどん変わってきて、まだまだこれからもどんどん色が変わっていくと思ってるのですが、その道を進んで頑張るのは本人だと思っているので、必要以上の口出しはしないようにしたいと思っています。でも色々なところから情報を仕入れて自分で調べて考えている姿を見ますし、そのきっかけは学校が作ってくださってるんだなととても感じています。1年ほどしか自己発信コースにいませんが、ぼんやりとした夢からやりたいと思うことを沢山みつけて模索している姿を見ると楽しみだと思いますね。たとえチャレンジした結果が芳しくなかったとしても、自分のできることを考えたり、次のステップのためにどう動けばいいかを考えることも人生だと思うので、心配もあるけれど楽しみですね。

肩の力を抜いて同じ目線で親として伴走すること

(下山田)面白い。一緒に伴走している感じがいいですね。過干渉でも完全放置でもなく、とてもいい距離感で信じて見守りながら対話を続ける羨ましい関係だと思いました。

(Mさん)Iの上に長女がいるのですが、やっぱり上の子のときは初めての子育てだったので色々悩んで、体力的にも精神的にも大変だった時期がありました。その時を思い返してみると、自分中心で自分の理想を押し付けてしまっていたように思います。最初、子どものことが理解できなくて、「どうしてみんなができることができないんだろう」と思ったり、友達関係で本人が悩むことが多かったのですが、どう手助けをすれば良いか分からず、「自分がどうにかしなくちゃいけない」という気持ちが強かったんです。でも長女が高校に行く際、自分のやりたいことを自由にさせてみたら、娘を理解してくれる友達に出会えたんですよね。

友達が100人いるよりも、自分が行き詰まって辛い時に思い出して声をかけてくれる友達が1人いる方が幸せだと思うんです。やっぱりIからも友達関係の悩み相談は時々あるのですが、平和なまま10代が過ぎて20代半ばや30代で急に人間関係でぶつかるよりは、今経験しておく方が良いと思います。子どもが人間関係で行き詰まっている姿を見て、自分も一緒に悩んだ時もありますが、ふとした時にこの子はこの子の人生、私は私の人生で、無理矢理一緒に重ねるように過ごさなくてもいいのかなって、ようやく私自身が肩の力を抜いて、子供と接することができるようになったと思います。

(下山田)子どもという枠の中に当てはめて考えると、なんで合わないのだろう、共感できないのだろうと思ってしまうけれど、人としてみることができれば、固定観念をこえてお互いを知り合うことができるのかもしれませんね。

(Mさん)親として人生の先輩として注意する時は沢山ありますが、私もちょっと天然なところがあるので、子供を頼るところもあるんです(笑)それこそSNSの使い方はこの子に全部教わっていて。10年前の私は、「親だから子供よりも上」という思いが強かったのですが、今はなるべく同じ位置にいるようにしたいと思うし、肩の力が抜けたことで同じ目線に立てるようになってきたと思います。大人でもできないことがあったら当たり前、反対に子供に大人よりもできることがあって当たり前だと思うんです。

自分を崩すことができるようになったことは、自分の中では大人になってから成長した部分だと思いますし、生きやすくなりました。若い時、特に30代の時って結婚や出産などのイベントがあると、どうしてもしっかりすることを周りから求められたり、生き急いでしまうことがあると思うのですが、私は子育ても半ば終わってきてようやく殻が破けた感覚がします。だから、若い方や夢に向かって頑張っている方、子育てをしている若い方を見ると助けたいと思いますし、すごく応援したくなりますね。

(下山田)親子間でのコミュニケーションに悩んでいる方たちに刺さるお話ですね。

(Mさん)やっぱり親では頼れない場面って正直出てくると思うんです。だから親以外の信頼できる大人を一人でも作っておくと、人生がすごく潤うと思います。そしてクラスメイトにしても仕事仲間にしても、同じ目標に向かっている仲間だからこそ絶対にぶつかる時もあると思うんですよ。その時に背中を向けたとしても、また180度回転すれば向き合えるじゃないですか。そういう風に背中を向けっぱなしにしない意識は持ってた方がいいなと思います。お互いが嫌いになってそうなったわけではないと思うんです。コミュニケーションをきちんと取れば、絶対解決できると思うので、目標を持って頑張っている皆さんがうまくいくといいなと思いますね。

あとがき

自己発信コースでの活動やJ-lab.×DeruQuiコラボゼミを通して、生徒たちは自己理解や、想いを相手に伝えることを実践してきました。そしてそこで学んだことは、学校を飛び越えて、家庭や社会の中での振る舞いにも変化をもたらしていることがインタビューを通して見えてきました。

人は多面的です。学校で見せる一面が家庭とは違ったりその逆もありますが、あるコミュニティで学んだことや気づいたことが、他のコミュニティで還元されてまた新しい学びや気づきが生まれていくのではないでしょうか。そしてその基盤となる部分に自分なりの言葉や振る舞いをみつけ、相手とコミュニケーションをとる力があるのかもしれませんね。

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IIterviewer : Honami Uchiyama , Shiho Simoyamada

Editor : Kanami Oka

Photographer : Kanae Fukumura

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■コラボゼミに関するお問い合わせはこちらから

reboltiIc@gmail.com

■インタビューにご協力いただいた方

十文字中学・高等学校

一般社団法人 DeruQui

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